杉山 仁彦 / Sugiyama Yoshihiko
自身の作家性と作品について。
私は作家の『私性』と外的要因への「選択」が、芸術家の作家性を構成している最小単位であると考えています。そのため、普段は私自身の『私性』と展示場所周辺の『場所性』の複合から作品を制作しています。大学院入学時からは、「鑑賞者同士は、どのように接続されていくのか。」という問いを元に、鑑賞者同士の『コミュニティ形成』には何が必要かを研究しています。
私自身の『私性』とは、私自身が過去経験してきたことや感じたことなどを指していますが、根幹には幼少期から患っている「骨髄異形成症候群」という持病の存在があります。しかしながら、その事象を簡単に「生と死」とまとめてしまうと取りこぼしてしまう要素が数多くあります。そこで、現在の制作では「過去経験してきたことや感じたこと」とあえて広く捉え、制作しています。例としては、持病を患ったことによる健常者との死生観のズレ、持病の症状から来る身体的な感覚、持病を宣告された時のストレスから来ていると考えられる中学時代の不登校の経験などが挙げられます。
展示場所周辺の『場所性』とは、ホワイトキューブでは存在しない展示場所特有の環境やその周辺の文化のことを指しています。それをリサーチし『私性』と繋げ、主にインスタレーションとして展示、提示しています。『場所性』が先行し展示のコンセプトを制作することが多く、大学院の専攻は陶芸ですが、ミクストメディアになることが多々あります。
鑑賞者同士の『コミュニティ形成』とは、展示場所とその周辺の環境、文化を形成している住民の方々や作品を制作した私自身も最初の鑑賞者として含め、作品の要素として捉えています。その結果、展示会場で鑑賞者同士が交流し、その場に新しいコミュニティや文化が形成されるのではないかと仮定して、現在試みています。
2024/8/12